第8回 地 震 ② 

啓林館 地学  p69~p83

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地震の予知
 まず,言葉のことですが,予報,予知,予測,予言などの意味を考えておきましょう。 天気予報で明らかなように,数日のうちの可能性を言うのが予報です。警報になれば別ですが, 外れてもまあしかたがない。予測は,変化傾向をいう株価などで使います。 予言は,様々な出来事を含んで,占いなど,科学ではあまり好まれない言い方です。 そして,地震予知は,いつどこで発生するかを事前に知らせる(被害を)ことですので, 発表するとすれば社会的に重大な意味を含んでいると言えます。現在,確率を使った予測に近いものはなされていますが, 科学的に地震を予知することはできない,というのが一般的な見方になっています。それでは困ると思う人も多いですし, 研究は進歩しているのではないかと思うかもしれません。火山噴火などでは,前兆現象が捉えられるので, 地震にもあると考えているかもしれませんが,世界でも有数の観測網を備えていても,突然発生するのが地震です。 東京大学名誉教授のロバート・ゲラー博士は20年前から一貫して,予知よりも基礎研究に予算をつぎ込むべきだと, 主張しています。ときどき週刊誌などにどこそこで1月以内に大地震が来る,などと書かれたりしますが, これらが今まで当たったためしはありません。偶然当たることもあるかもしれませんが科学的な根拠は,曖昧(再現性がない) と考えて良いでしょう。ただ,プレート境界地震に関しては,おなじ場所で数100年に1回程度の繰り返しがはっきりしています。 周期性があるので今後30年間の発生確率などをしめして,防災意識をたかめ減災対策を講じているのが現状です。
地震の再来間隔と空白域
 今回の課題にある,巨大地震や被害の大きかった地震は,歴史文献に記録があるばあいに,震源が特定できたものは, 再来間隔から,長期的に予測を行っています。関東地方でも,フィリピン海プレートの沈み込みによる相模湾を震源とする関東地震 が,くり返し起こって千葉県の房総半島南端(千倉)海岸などに海岸段丘として(地震の隆起による地殻変動の)痕跡が残されています。

この地震を関東地震 といい,もっとも最近発生したのが1923年の関東大震災です。その前が1703年(元禄16年)の元禄地震で, 220年の間隔がありますが,そろそろ100年になるので,プレート沈み込みの歪みが蓄積しているので, 安政の江戸直下型地震のような可能性が指摘されています。そして,元禄地震の 4年後の1707年に駿河湾の海底を震源とする東海地震が発生,2ヶ月半後に富士山が噴火しています。

課題ですと,次の南海トラフ地震は,2070年とかになる計算ですが,安政の東海地震から160年以上たっていますから 1946年の東南海地震で動かなかった東海地震が発生すると,それをきっかけに連動型が起こるのではないかと心配されているのです。 これらの海溝型地震では,アスペリティーという岩盤の固着度の差から, スロースリップ地震なども含んだメカニズムの検討がなされています。
参考 アスペリティーとゆっくりすべり========啓林館教科書P76
プレートの沈み込みに伴い陸のプレートと海のプレートの境界に蓄積した歪みが,瞬時に解放されるのが海溝型の巨大地震である。 その境界面(=断層面)には固着している部分(アスペリティー)と,普段からゆっくりとすべっている部分があると考えられている。


アスペリティーが急激に大きくすべるときに巨大地震が発生する。プレートは年間数~10cmほど動いているので, 例えば50年間に蓄積された歪みが解放される場合,アスペリティーでは瞬時に数mもすべることになる。 ゆっくりすべりの例としては2000~2005年に浜名湖付近で観測された「東海スロースリップ」がある。 5年間に10~20cmほどプレート境界面に沿ってゆっくりすべりが起こり,マグニチュード7.1の地震に相当するエネルギーが解放されたと考えられている。 2011年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震(マグニチュード9.0)では,ふだんゆっくりすべりが起きている領域でも地震すべり(地震波の放出を伴うすべり)が起き, 大きな歪みが蓄積されていたことが明らかになった。このことは単純なアスペリティーとゆっくりすべりの関係だけでは,プレート境界での歪みの蓄積過程が説明できていないことを示しており, 今後の課題となっている。  

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